ネイピア数 。自然対数の底。自然対数という割に、ぜんぜん自然じゃない、と私は思っていた。どの説明を聞いてもどうにもしっくりこない。
つい先日、この数を人に説明する機会があったのだが、どうにも歯切れの悪い説明になってしまった。
この数を、どうにかして自然に導入する方法はないだろうか。これが本日のテーマである。
色々説明の方向性はあると思うが、この記事では、
となるような をネイピア数と呼ぶ、という導入の仕方を採用しよう。
を定義する前から を使うのは、気持ちが悪いので、ネイピア数 のことを一回サッパリ忘れよう。
まずは、一般の数 に対する指数関数 を考えよう。
微分の定義より、
となる。指数法則を使ってもう少しだけ変形できる。
ここで手が止まる。さぁ、困った。
さらに進めるための方法は一応ある。唐突だが以下のような変数変換を考える
のとき であることを確認しておく。
また、
のようにも変形できる。
これらを式 (2) に代入しよう。すると、以下のように変数変換できる。
対数関数の性質を使って変形すると、
となるだろう。ここで、分母にある対数関数の底は定数なので、 は対数の中に入れてもかまわない。
したがって、こうだ。
分数が気持ち悪いので、対数の性質を使って、底と真数をひっくり返して分数を消してしまおう。
式 (1) の左辺をもう一度もってくると、
となるだろう。
式 (3) の意味を考えよう。
もし、 という数が、右辺の対数の底と一致する、つまり、
が成り立てば、上の式は
となり簡単になる。すなわち、微分しても元の形に戻るということだ。
つまり、このような数
は「微分に対して指数関数を保存する」という特別な数なのである。
特別な数には、名前をつける必要があるだろう。この数を今から 「ネイピア数」 と呼ぶことにする。
記号も だと色々と紛らわしいので、特別な記号を付けよう。そうだな としておこうか。
こうして、ネイピア数 が以下のように定義されるわけだ。
《ネイピア数の定義》
どうだ。だいぶ自然な流れだろう?
この数の意味はもちろん、微分に対して指数関数を保存する数である。
気になる点があるとすれば、ネイピア数の定義式 (4) は、果たして1つの値に収束するするのだろうか、ということだ。
本記事の締めとして、数値的にではあるが、確認してみよう。
こういうときは Google 電卓に任せるのが一番手っ取り早い。
上から順にクリックしていくと、だんだんとある一定の値に近づいていくことが見て取れるだろう。
これこそがネイピア数の値である。
こうして特別な数、ネイピア数 が見事導入されたわけだが、納得して頂けたであろうか?