tsujimotterの下書きノート

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今,密かに「互いに素」がマイブーム

今,「互いに素」が熱い。

互いに素という言葉は,否定的な響きのする数学用語であるが,こと整数論においては非常に強力な武器なのだ。


互いに素といえば「ユークリッドの互除法」を思い出す。互いに素な2つの数から,ユークリッドの互除法により  1 という数を作ることができる。これが本当に強力なのである。


例を挙げよう。

ある群 G の元 g をとってきて,その元が以下の式を満たすとする。 e G の単位元である。

 g^5 = e \tag{1}
 g^7 = e \tag{2}

ここで, (5, 7) = 1 であるから,ユークリッドの互除法により,

 5a + 7b = 1

となるような整数  a, b が存在する。したがって,

 g^{5a+7b} = g^1 \tag{3}

が成り立つ。左辺に  (1), (2) を代入すると,結果として

 g = e \tag{4}

という結論が得られるわけだ。



この話はもう少し応用が利く。

たとえば, p という数が素数で,先の群の位数  |G| = h を割らないとしよう。すなわち,

 p \nmid h

である。

先ほどと同様に,

 g^p = e \tag{5}

とする。

また,有限群におけるフェルマーの小定理により,

 g^h = e \tag{6}

が成り立つ。

ここで, (p, h) = 1 であるから,先ほどと全く同様に,

 ap + bh = 1

となるような整数  a, b が存在する。したがって,

 g^{ap + bh} = g^1 \tag{7}

となって,結局,

 g = e \tag{8}

を得る。


互除法はユークリッド環しか適用できないから,一見,適用範囲が狭そうに思えてしまう。しかしながら,先の例のように,群  G の元の指数を考えれば,その指数は  \mathbb{Z} の元になるわけで,単なる整数である。すなわち,ユークリッド環を考えているわけだ。

指数を  \mathbb{Z}/h\mathbb{Z} の元と見立てて, h と互いに素な  p には逆元が存在する,といってもいい。全く同じことを言っているだけだ。

つまり,有限群でありさえすれば,どんな群にも使えてしまう強力な論法なのである。


有限群と言えば,イデアル類群も有限群だ。

あるPIDでない二次体か円分体  K を考えて,そのイデアル類群の位数  h_K と互いに素な  p を用意し, K のイデアル  A p 乗を考える。もし, A^p が単項イデアル(すなわちイデアル類群における単位元)であれば,即座に  A が単項イデアルであることがわかるのだ。

「単位元である」ということは,イデアル類群においては「単項イデアルである」ということに他ならない。整数論においては「単項イデアルかどうか」は非常に重要な問いであるから,この問題は考えるに値するといえる。


私がこの話に興味を持ったのは「フェルマーの最終定理におけるクンマーの証明に使われているから」なのだが,「互いに素」という事実だけを使っているのが最高にクールだと思う。

クンマーの証明は「円分体  K = \mathbb{Q}(\zeta_{p}) の類数  h_K p が割り切らないときに限り,フェルマーの最終定理が解決する」というものだ。残念ながら,この話をするためには,事前準備がもう少し必要だ。

今日はこの辺にしておこう。