私の日曜数学活動をサポートしてくれているパートナーから以下のような趣旨の質問をもらった。
(4n+1型の素数が必ず2つの平方数の和でかけるが)4n+1型の合成数は2つの平方数の和で表せるのか?
これについては実はあまり深く考えたことがなかった。とてもするどい質問だと思った。
答えは「できるときとできないときがある」だ!
たとえば,"57" という数は
で 型であるが,2つの平方数の和で表すことができない。*1
一般に,合成数が2つの平方数の和で表せる必要十分条件は,以下のとおりである。
ある正の整数が2つの平方数の和でかけるのは,素因数に 2 か 4n+1 型素数だけを持つときか,すべての 4n+3 型素因子の指数が偶数のときだけである。
実にややこしい条件だ。要するにいいたいことは,指数が奇数となるような 4n+3 型素因数が1つでも入ってしまうとアウトだ,ということ。2つの平方数の和で表すことができない。
このことは以下の流れで示すことができる。
まず,以下の補題を考える。
かつ ならば, は の形ではかけない
もし, が上の形でかけるならば,
となるはずであるが, より である。したがって, となる が存在するから,
である。これより,
となるから, は の平方剰余である。しかし, であるからそんなわけがない。補題証明終了。
続いて次を示す。
かつ (すなわち, は の素因子 の指数)で, が奇数ならば, は の形ではかけない
とし, と仮定する。 を割り切る の最高べきを とする。すると,
とおいて,
とできる。 を割り切る の最高べきの指数は の分を から引いたものだから,。 c は奇数より である。つまり, は を割り切る。ゆえに,
となってしまい,これは先の補題に反する。したがって, は偶数でなければならない。
以上より,「指数が奇数となるような 4n+3 型の素因数が1つでも入ってしまうと,2つの平方数の和で表せない」ことがわかる。 型素数は素因子に入っていてもいいが、平方数でなければならない。
次に示すのは,「 型の素数か 2 か 型素数の平方数(すべて で表せる数)を掛け合わせてできた数は,必ず の形で表せる」ということだ。
これが実に面白い。高校生で習う以下の恒等式を使う。
ブラーマグプタの恒等式:
左辺は任意の 型の2数の積で,右辺はこれが再び の形であらわせることを意味している。
フェルマーの二平方定理より,4n+1 型の素数は,必ず の形であらわせる。 は
となって,明らかに2つの平方数の和で表せる。また, 型素数も,その平方をとれば,
となり,無理やり2つの平方数の和で表せる。
これらを用いると,目的の「 型の素数か 2 か 型素数の平方数(すべて で表せる数)を掛け合わせてできた数は,必ず の形で表せる」が言える。
以上で証明終了だ。QED.
「ブラーマグプタの恒等式」は高校1年のときに,式の展開や因数分解って,応用編として唐突に登場した覚えがある。まさかこんな形で証明に利用できるほど,有能な恒等式だったとは。
今回の話の結論としては,ようするに「一般の についての問題は, の素因数に分解し,それぞれの素数の問題に帰着できる(場合がある)」ということだ。だから,素数がどういう形で表せる数なのか,素数の法則は何か,ということが本質的になってくるわけだ。まさに,「素数は数の元素」である。
せっかくなので,1から100までで,平方数の和で書ける数を具体的に列挙してみよう。ちゃんとルールどおりなっているか,確認してみてほしい。
赤字 は 型の素数であるが,この指数はちゃんと偶数になっているだろう。
余談
この記事は3回ぐらい書き直してます。これぐらい簡単に示せるだろう、とたかをくくっていたら、意外とまとまらず。どうしてもあーでもないこーでもない書き直して、最終的に以下の文献をみて解決しました。勘違いしていた部分も多々みつかって、大変勉強になりました。
参考文献
- 作者: G.H.ハーディ,E.M.ライト,Godfrey Harold Hardy,Edward Maitland Wright,示野信一,矢神毅
- 出版社/メーカー: シュプリンガー・フェアラーク東京
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*1:グロタンディーク "素数" なのに!