tsujimotterの下書きノート

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朝岩澤理論3:岩澤理論とその展望(上)

第3週目に突入。

tsujimotter-sub.hatenablog.com
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の続き。


ポイントをまとめていく。あくまで自分のメモ用なので、分かりにくくても勘弁。

第3週目(2017/2/3 〜 2/9)

2/3:ネーター正規整域上の加群の構造定理(2.3.2)

  • 有限生成  \mathcal{R} 加群への写像  M \rightarrow N が擬同型写像 =>  {\rm Ker} {\rm Coker} が擬零 \mathcal{R}加群( \mathfrak{p}\in P^{1}(\mathcal{R}) に対して長さ  l(\mathfrak{p}, M) = 0
    • 擬同型写像は必ずしも同値関係を定めない(対称律が成り立たない)
    • 有限生成「ねじれ」 \mathcal{R} 加群同士の擬同型写像は同値関係を定める。これを擬同型  M\sim N とかく。
  • 鏡映的  \mathcal{R} 加群:標準的二重双対写像が同型
    • 有限生成自由  \mathcal{R} 加群は鏡映的( \mathcal{R}^{\oplus r}
    • 鏡映的  \mathcal{R} 加群は非自明なねじれ元を持たない( \mathcal{R}^{\oplus r} \oplus \mathcal{R}/f_1 \oplus \cdots みたいな後半部分がない)
    •  \mathcal{R} をネーター正規整域,ねじれのない有限生成  \mathcal{R} 加群  M に対して, M^{*} は鏡映的  \mathcal{R} 加群
  • 自由加群とねじれ加群
    • 自由加群=>ランクが正
    • ねじれ加群=>ランクがゼロ

2/4:ネーター正規整域上の加群の構造定理(2.3.2)(続き)

  •  \mathcal{R} を Krull 次元が2以下で剰余体が有限な完備ネーター正則局所環とする。このとき勝手な鏡映的  \mathcal{R} 加群  \mathcal{N} は有限生成自由加群
    • Krull 次元が0または1のとき, \mathcal{R} はそれぞれ体または離散付値環 (DVR) となる。この場合明らかなので次元が2の場合だけ考えればよい。
    • Krull 次元が3以上の場合一般に成り立たない。たとえば  \mathcal{R} = \mathbb{Z}_p[[T_1, T_2]] のとき

2/5:ネーター正規整域上の加群の構造定理(2.3.2)(続き)

  • Thm 2.3.6 一般的構造定理
    • ネーター正規整域  \mathcal{R} とし、有限生成ねじれ \mathcal{R}加群  \mathcal{M} に対して、一意的に定まる  \mathcal{R} の高さ1の素イデアル  \mathfrak{p}_1, \; \cdots, \; \mathfrak{p}_u があって,擬同型  \mathcal{M} \longrightarrow \bigoplus_{i=1}^{u} \mathcal{R}\big/ \mathfrak{p}_i^{q_i} が存在する(重複もあり得る)
  • 因子イデアル  {\rm Div}_{\mathcal{R}}(M) と特性イデアル  {\rm char}_{\mathcal{R}}(M) が定義された
    •  {\rm Div}_{\mathcal{R}}(M) = \prod_{\mathfrak{p}\in P^1(\mathcal{R})} \mathfrak{p}^{l(\mathfrak{p}, \mathcal{M})}
    •  {\rm char}_{\mathcal{R}}(M) = \left\{ x\in \mathcal{R} \mid {\rm ord}_{\mathfrak{p}}(x) \geq l(\mathfrak{p}, \mathcal{M}), \; \forall \mathfrak{p} \in P^1(\mathcal{R}) \right\}
  •  P^1(\mathcal{R}) は高さ 1 の素イデアルの集合, l(\mathfrak{p}, \mathcal{M}) \mathfrak{p} の長さ。
  • 詳しくはノイキルヒの Chapter V を読もう

2/6:岩澤加群の構造定理と岩澤不変量(2.3.3)

  •  \mathcal{R}=\Lambda_{\mathcal{O}} として「岩澤加群の構造定理(少しだけ精密な構造定理)」を導出した
    •  M \longrightarrow N \oplus \mathcal{R}/\mathfrak{p}_i^{q_i} の擬同型( N は鏡映的 \mathcal{R}加群)
      •  \mathfrak{p}_i は高さ1の素イデアル。
    •  {\rm Ker}, {\rm Coker} の有限性
    •  \mathcal{O}[[T]] は Krull 次元2の正則局所環と Thm 2.34 より、 N は有限生成 \mathcal{O}[[T]] 加群(ランクが出る)
    • 正則局所環より高さ1の素イデアルは単項イデアルであり、またp進Weierstrassの準備定理より、 \varpi または  F_i(T)(既約な非単数根多項式)
  • 今までの定理のオンパレードだった

2/7:岩澤加群の構造定理と岩澤不変量(2.3.3)(続き)

  • 構造定理の完全系列を書いておく  \varphi が擬同型

 \displaystyle 0 \longrightarrow {\rm Ker}\;\varphi \longrightarrow M \xrightarrow{\varphi} \mathcal{O}[[T]]^{\oplus r} \oplus \bigoplus_{i=1}^{s}\mathcal{O}[[T]]\big/(F_i(T)^{n_i}) \oplus  \bigoplus_{j=1}^{t}\mathcal{O}[[T]]\big/(\varpi^{m_j}) \longrightarrow {\rm Coker}\;\varphi \longrightarrow 0

  • 上記の擬同型の先を基本岩澤加群 (elementary module) という。有限生成  \mathcal{O}[[T]] 加群  M に対して,同型を除いて一意的に定まる
    • ものすごーく細いけど、注意 2.42 の最初の式に誤植を見つけた:  \mathcal{O}[[T]]\big/G(T) とあるけど正しくは  \mathcal{O}[[T]]\big/(G(T)) だと思う。
  • 構造定理により岩澤基本加群との擬同型が一意的に定まるので、岩澤基本加群に出てくる多項式と  \varpi とその指数を使って不変量を定める
    • 特性イデアル(ランク  r = 0 のとき):  {\rm char}_{\mathcal{O}[[T]]} (M) = \left(\prod_{i=1}^{s} F_i(T)^{n_i} \prod_{j=1}^{t} \varpi^{m_j}\right)
    • 岩澤 \lambda不変量:  \lambda(M) = \sum_{i=1}^{s} n_i {\rm deg} F_i(T)
    • 岩澤 \mu不変量:  \mu(M) = \sum_{j=1}^{t} m_j
    •  \lambda, \mu って具体的に計算できたんか!!!という驚き
  • ずっと  \mathcal{O}[[T]] で議論していたけど、もちろん岩澤代数 \Lambda_{\mathcal{O}} に対しても構造定理を考えることができる。
    • この場合,位相的生成元  \gamma を固定して,非標準的な同型  \Lambda_{\mathcal{O}} \simeq \mathcal{O}[[T]] を考える。
    •  \mathcal{O}[[T]] の構造定理から  \mathcal{O}[[T]] 加群  M' の特性イデアルを定める。
    • 先ほどの非標準的な同型によって  \mathcal{O}[[T]] から   \Lambda_{\mathcal{O}} に戻して,  \Lambda_{\mathcal{O}} 加群  M の特性イデアルを定めることができる。
    • このとき非標準性が打ち消されて,  M の特性イデアルは標準的になる。

2/8:特性イデアルと岩澤不変量

  • 岩澤代数をべき級数環として表示することで、いろいろ便利だが  \Lambda_{\mathcal{O}} だけで議論することも可能
  • 特性イデアルは加群の「大きさ」を測る不変量の意味がある
  •  \mathcal{M} を有限生成ねじれ  \Lambda_{\mathcal{O}} 加群とする。構造定理から以下がわかる(大切!!)
    •   \mathcal{M} \mathcal{O} 加群として有限生成と   \mu(\mathcal{M}) = 0 は同値
    •   \mathcal{M} が有限アーベル群と   \mu(\mathcal{M}) = \lambda(\mathcal{M})= 0 は同値
  • 特性イデアルの多項式部分には,行列式による解釈がある(行列式を用いて IMC が表せることを思い出そう! --> 2日目)
    •  V = \mathcal{M} \otimes_{\mathcal{O}} {\rm Frac}(\mathcal{O}) \Gamma が連続的に作用するので,位相的生成元  \gamma を用いて以下のように表せる

 \displaystyle \prod_{i=1}^{s} F_i(T)^{n_i} = {\rm det}\left(xE_{\lambda} - (\gamma - 1);  V  \right)|_{x=T}

  • 函数体におけるフロベニウスの作用を思い出そう

2/9:岩澤加群の特殊化に関する代数的な準備(2.3.4)

  • (前回の続き)特性イデアルは Fitting イデアルと関係が深い
  • Thm 2.45  \mathcal{M} を有限生成ねじれ  \mathcal{O}[[T]] 加群とする.特性イデアル  {\rm char}_{\mathcal{O}[[T]]}(\mathcal{M}) は,単項イデアル  (\omega_n(T)) と非自明な共通因子を持たないとする.このとき, \lambda, \mu を岩澤不変量とすると, \nu \in \mathbb{Z} が存在して,十分大きな  n で以下が成り立つ

 \#(\mathcal{M}/\omega_n(T) \mathcal{M}) = q^{\lambda e n + \mu p^n + \nu}

  •  \lambda, \mu, \nu の定め方,十分大きな  n の具体的評価も証明にでてくるよ(お楽しみに)
  • ちなみに  \omega_n(T) はずいぶん前だけど、8日目の Thm 2.10 で  \Lambda_{\mathcal{O}} \simeq \mathcal{O}[[T]] の同型を示すのに出てきた  \omega_n(T) = (T+1)^{p^n} - 1 ですね。

雑感

3週目が無事に終了。

しばらくネーター正規整域の一般論が続いて大変だったけど、2.3.3あたりから岩澤加群の具体的な話が出てきて、しかもこれまで準備してきた道具をバリバリ使って証明が進んでいくもんだから楽しくてしょうがない。

最初の頃は、岩澤代数を  \mathcal{O}[[T]] という「べき級数環」に置き換えるとわかりやすい、という心がわからなかった(そもそもべき級数環自体よくわかっていなかった)が、勉強していくうちに段々とわかってきたかもしれない。たとえば極大イデアルが1つだったり、クルル次元が2で高さ1のイデアルがすべて2種類の単項イデアルだけとか、いろいろわかりやすい性質をもっていて、これが構造定理に具体的に使えるとか。p進ワイエルシュトラスの準備定理とか、このために準備してきたのか、とか。

おかげで環論のモチベーションが出てきたのでアティマクを買った。

Atiyah‐MacDonald 可換代数入門

Atiyah‐MacDonald 可換代数入門


特性イデアルとか岩澤不変量とかも、今までは唐突に現れる印象だったけど、岩澤加群の構造定理から自然に出てくるのだとわかったのは面白かった。ってか、岩澤類数公式の \lambda, \mu って岩澤不変量だったのですね。具体的に定義されていたことにびっくりした。

一般論を先に勉強したことで、どこまでが一般に成り立つことで、どこまでが岩澤理論特有なのかが、少しづつ見えつつあるのもよい。

まだ、3週間で累計21時間しかやっていないが、それでもこんなにも理解が進んで世界の見え方が変わるものなのかと驚いている。それまでは、本を開いてもパラパラ流し見てすぐ閉じてしまっていたのに。もっとがんばったらいったいどこまで進めるのだろう。加群の完全系列で、ごっつい式が出てきても動揺しなくなったのはよいことだ(基本岩澤加群の式とか、最初見たらきっと発狂していたはずだ)。

一方で、やはり2章に入ってから、若干ペースが落ちたきがする。やっぱり思っていた以上に難しいし、先は長い。休日に別途時間をとるなどしてペースをあげないと、目標に到達できないだろう。

朝に1時間決まった時間に勉強することについて。この習慣は自分にはあっていると感じた。一応これでも社会人なので、仕事が終わって帰ってくると疲れて勉強どころじゃない。朝なら誰にも邪魔をされずに勉強できるし、ちゃんと起きれば確実に勉強の時間を取れる。毎日続けている事実が、確かな自信を与えてくれる。

毎朝ラジオ体操をしているのだけど、これも素晴らしい。ここ数日、心なしか身体が軽い気がする。