tsujimotterの下書きノート

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平方完成と2次拡大

このツイートの意味がやっとわかったので、忘れないうちにメモ。要するに「二次方程式の解の公式」を求める方法を一般的な体に対して適用すればいい。


示したいことは、次の命題である。以下、 K を標数 2 でない体とする。

命題:
以下の全単射が存在する。

 (K^\times)/(K^\times)^2 \; \longleftrightarrow \; \{ \; K \, の1次拡大 or 2次拡大  \; \} / \simeq{}


さらに、 (K^\times)/(K^\times)^2 の単位類は  K 自身に対応し、 (K^\times)/(K^\times)^2 の非単位類は  K の2次拡大に対応する。


これを示すために、まずは次を示す。

補題1:
 K' K の2次拡大
 \; \Longleftrightarrow \;  D \in K^\times, \sqrt{D} \not\in K^\times が存在して  K' = K(\sqrt{D})

この証明の  \Longrightarrow で平方完成を用いる。なお、 \sqrt{D} は 2 乗して  D に一致する  \overline{K} の元とする。

 (\Longrightarrow) の証明:
 K' = K(x) K の2次拡大のとき、 x a, b, c \in K, \;\; a \neq 0 を用いて

 ax^2 + bx + c = 0

と表せる。 K は標数2ではない体より、 b' = \frac{b}{2a},\; c' = \frac{c}{a} を用いて、 b = 2ab', \; c = ac' と代入すると

 x^2 + 2b'x + c' = 0

とできる。念のため言っておくと、 2 は乗法の単位元を  1 として  2 := 1+1 ということであるから、 2 \in K である。標数2のとき、2の逆元は  K に存在しないので、このような  b' はとれないことに注意する。

改めて  b', c' b, c と書くことにする。

平方完成すると

 x^2 + 2bx + b^2 - b^2 + c = 0
 (x + b)^2 - b^2 + c = 0
 (x + b)^2 = b^2 - c

 y := x + b とすると

 K(y) \simeq K(x)

より、 x の代わりに  y を考えてよい。

 y^2 = b^2 - c

 D := b^2 - c とすると、 y は 2 乗して  D になる元、すなわち  y = \sqrt{D} である。よって、 K(x) = K(y) = K(\sqrt{D}) なる  D \in K^\times が存在する。■


 (\Longleftarrow) の証明:
 \sqrt{D} K に添加した体  K(\sqrt{D}) は2次拡大である。■



次に示したいのは、

補題2:

 \varphi: K^\times / (K^\times)^2 \; \longrightarrow \; \{ \; K \, の1次拡大 or 2次拡大  \; \}/ \simeq{},
 D(K^\times)^2  \longmapsto K(\sqrt{D})

が全単射。


まず、写像  \varphi が well-defined であることを示す。

 D (K^\times)^2 の元  A^2 をかけて  DA^2 としたとき,

 K(\sqrt{D}) = K(\sqrt{DA^2})

よって、 \varphi D(K^\times)^2 の元の取り方によらない。


次に、単射性( K(\sqrt{D}) = K(\sqrt{D'}) \; \Longrightarrow \; D(K^\times)^2 = D'(K^\times)^2)を示す。 K(\sqrt{D}) = K(\sqrt{D'}) より、 \sqrt{D} = k\sqrt{D'} なる  k \in K^\times が存在する。両辺平方をとると  D = k^2 D' より、 D(K^\times)^2 = D'(K^\times)^2 が言えた。


また、全射性を示す。 K' \in \{ \; K \, の1次拡大 or 2次拡大  \; \}/ \simeq{} について、補題1より  K' = K(\sqrt{D}) なる  D \in K^\times が存在する。よって、

 K^\times \longrightarrow \{ \; K \, の1次拡大 or 2次拡大  \; \}/ \simeq{}, \; D \longmapsto K(\sqrt{D})

の全射性がいえた。先に示した  \varphi のwell-defined性より、 \varphi の全射性も言えた。■



最後に、冒頭の命題を示す。

単位類の行き先であるが、 (K^\times)/(K^\times)^2 の単位類を  E(K^\times)^2 としたとき、 K(\sqrt{E}) = K となり、これは  K の2次拡大ではない。
一方で、それ以外の非単位類  D(K^\times)^2 \in (K^\times)/(K^\times)^2 に対しては、 K(\sqrt{D}) K の2次拡大。


よって、 K の2次拡大の同型類全体は  (K^\times)/(K^\times)^2 の非単位類と1対1対応があることが示された。■



たとえば、ヘンゼルの補題の記事で示したように  \sqrt{2} \in \mathbb{Q}_7 であるから、   \mathbb{Q}_7(\sqrt{2}) = \mathbb{Q}_7。一方で  2 \in (\mathbb{Q}_7^\times)^2 である( (\mathbb{Q}_7^\times)/(\mathbb{Q}_7^\times)^2 の単位類に対応)。

また、 \sqrt{-1} \not\in \mathbb{Q}_7 であるから  \mathbb{Q}_7(\sqrt{-1}) \mathbb{Q}_7 の2次拡大。一方で  -1 \in \mathbb{Q}_7^\times \backslash (\mathbb{Q}_7^\times)^2 である( (\mathbb{Q}_7^\times)/(\mathbb{Q}_7^\times)^2 の非単位類に対応)。

上で示したことは、すべての2次拡大はこんな風に  (\mathbb{Q}_7^\times)/(\mathbb{Q}_7^\times)^2 の非単位元に対応した元による拡大で列挙できるということである。


実際、 p を奇素数としたとき、 \mathbb{Q}_p の2次拡大は、 \mathbb{Q}_p(\sqrt{\mu}), \; \mathbb{Q}_p(\sqrt{p}), \; \mathbb{Q}_p(\sqrt{p\mu}) で列挙できることがわかる。 \mu \in \mathbb{Z}_p^\times は平方でない単数とする。


(ほんとに合ってるのか自信ない・・・)