前回は「整数環はややこしい」と言ったところで終わりました。
二次体の整数環はややこしい - tsujimotterの下書きノート
今回は,整数環の本当の定義を説明しましょう。
その前に,最小多項式の話をしておきましょう。
二次体 の任意の元を とします。この は,次のような整係数の二次方程式の解となるはずです。
整係数なので, です。
が解であることは,二次体の元が (ただし,) と表されることと,二次方程式の解の公式を考えれば明らかでしょう。
最小多項式とは,このような方程式のうち次数が最小となるものです。有理数だったら,最小多項式は1次になりますね。
ここで,最小多項式の最高次の項の係数が であるとき,その最小多項式はモニックであるといいます。
二次体の元のうち,最小多項式がモニックであるようなすべての元の集合は「環」をなします。この環のことを,二次体の整数環と呼ぶのです。
といっても,最小多項式も直感的じゃないし,モニックもよくわからないですよね。そこで,もう少し直感的な定義を出しましょう。
まず,ノルムとトレースを定義します。
その前に, に共役な元を定義しましょう。
二次体の元 を
のように書いたとき,
の式で定義される を に共役な元といいます。複素数の共役とほぼ同じ意味です。
なぜ,共役かというと, の最小多項式 があったときに, も の根になります。したがって,
これを使って,最小多項式を具体化していきます。 ともに,上の方程式の解になるので,しかも最小多項式がモニックであれば,以下のように因数分解できます。
展開すると,
の定義を書き下すと,
さて,整数環の定義を思い出すと,最小多項式がモニックかつ整係数,でした。モニックはもう既に入れたので,あとは整係数であることです。すなわち,
上の式を のトレース,下を のノルムといって,それぞれ で表します。これらが,整数になるような を集めたものが,整数環というわけですね。
二次体を としたとき, の整数環 は以下のように定義できます。
ふぅ〜,ようやく定義できました。
あとは,これをガチャガチャ計算していけば,きっと前回の条件が出てくるはず・・・。
というわけで今日はこの辺にしておきます。
また,参考文献のリンクを貼っておきます。(ちなみに,今日の話は四章の冒頭のあたりの話)
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