tsujimotterの下書きノート

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Chebotarevの密度定理の使い方がわかった

2つのガロア表現  \rho, \rho' :  G_K \to \mathrm{Aut}_R(M) が与えられたとき,その同値性の判定は簡単ではない.ところが,それぞれのガロア表現の半単純化  \rho^{ss}, \rho'^{ss} に関して言えば, K のすべての不分岐な素点  v \in \Sigma_K\backslash S に対するフロベニウス元 \mathrm{Frob}_v \in G_K)のトレースの値  \mathrm{tr}(\rho(\mathrm{Frob}_v)), \mathrm{tr}(\rho'(\mathrm{Frob}_v)) の一致によって同値性を判定できる.面白いことに,この証明には「Chebotarevの密度定理」を使うことになる.


Chebotarevの密度定理を使うポイントは,

【仮定】任意の不分岐な素点vのフロベニウス \mathrm{Frob}_vについて \rho, \rho'同士のトレースが等しい.すなわち
 \mathrm{tr}(\rho(\mathrm{Frob}_v)) = \mathrm{tr}(\rho'(\mathrm{Frob}_v)), \;\; \forall v \in \Sigma_K\backslash S
から
【結論】任意の G_Kの元について \rho, \rho'同士のトレースが等しい.すなわち
 \mathrm{tr}(\rho(g)) = \mathrm{tr}(\rho'(g)), \;\; \forall g \in G_K
を導く部分である.簡単に説明したい.


まず準同型定理により,ガロア表現  \rho, \rho' G_K \mathrm{Ker}\rho \cap \mathrm{Ker}\rho' で割った群  H := G_K/\mathrm{Ker}\rho \cap \mathrm{Ker}\rho' を経由するから, H に対する表現だけを観察すればいい.

 E = \{h \in H \mid \mathrm{tr}(\rho(h)) = \mathrm{tr}(\rho'(h))\}

という集合を考えて, E = H であることが【示すべきこと】である.
このとき, E \subset H は【閉】集合であることがわかる.理由は参考文献で.

一方,次の集合を考える:

 F = \{h \in H \mid \exists v \in \Sigma_K\backslash S, h = \mathrm{Frob}_v)\}

つまり  F は不分岐な素点  v についてのフロベニウス  \mathrm{Frob}_v に一致するような  H の元の集合である.

これは,【仮定】より  E に含まれる.なぜなら,【仮定】により,少なくともフロベニウスについてだけいえば, \rho, \rho' のトレースが一致することがわかっているから.よって, F \subset E

もっというと, F \subset E \subset H

ここで,【Chebotarevの密度定理】より, F H の中に【稠密】に入っている(このPDFの系1.4より).
すなわち,稠密集合の定義より, F の閉包(定義: F を含むような最小の閉集合)は  H に一致する.

したがって,閉集合  E F を含むので,明らかに  H に一致しなければならない.よって, E = H がいえるというわけだ.

よって,すべての  h \in H について  \rho \rho' のトレースが一致することがいえて,【結論】が示された.証明おしまい.


参考文献:
今こちらを勉強しています.該当箇所は「命題 2-2-6.」です.「Chebotarevの密度定理」の使いどころはずっと気になっていたので,理解できてすごくうれしくてこの記事を書きました.
http://www.math.sci.osaka-u.ac.jp/~ochiai/ss2009proceeding/ss2009yamauchi.2010-2-13.pdf

また前提知識として,こちらも読んでおくといいと思います.
http://www.math.sci.osaka-u.ac.jp/~ochiai/ss2009proceeding/ss2009preparation.pdf