tsujimotterの下書きノート

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楕円曲線のハッセの定理とL関数の絶対収束(間違い)

この記事の執筆の際に無限積についてかなり大きな勘違いがありました。
以下の記事で訂正版を記載していますので、こちらをご覧ください。

tsujimotter-sub.hatenablog.com

間違った過程を残すのも悪くないと思い、こちらの記事はあえて残しています。


楕円曲線  E に付随するL関数

 \displaystyle L(E, s) = \prod_p \frac{1}{1 - a_p p^{-s} + p^{1-2s}} = \prod_p L_p(E, s)

が絶対収束する条件について考えたい。ここで

 a_p = p + 1 - \# E_p(\mathbb{F}_p)

であり、楕円曲線  E \bmod{p} での還元を  E_p と表す。

なお、本当は良い還元を持つかどうかでオイラー因子の形が変わるのだが、今回は一旦無視する(良い還元を持つものだけに限定する)。


収束条件を求める上で、楕円曲線のハッセの定理(次式)が使える。

 |a_p| \leq 2\sqrt{p}


なぜか。

唐突だが、オイラー因子  L_p(E, s) の分母において  T = p^{-s} として

 F_p(T) = 1 - a_p T + p T^2

という2次多項式を考える。この  F_p(T) が重根または相異なる虚数根を持つ条件を考えたい。これについては、判別式が負である条件を考えれば良い。

 |a_p|^2 - 4p \leq 0

すなわち

 |a_p| \leq 2\sqrt{p}

である。


つまり、こういうことである。

 |a_p| \leq 2\sqrt{p} \;\; \Longleftrightarrow \;\; F_p(T) が重根または相異なる虚数根を持つ


ハッセの定理( |a_p| \leq 2\sqrt{p})は真なので、  F_p(T) が重根または相異なる虚数根を持つから

 F_p(T) = 1 - a_p T + pT^2 = (1 - \alpha_p T)(1 - \beta_p T)

となるよう  \alpha_p, \; \beta_p とおく(重根の場合は  \alpha_p = \beta_p)。

 F_p(T) は実係数多項式なので、 \alpha_p, \beta_p は複素共役の関係にある。特に  |\alpha_p| = | \beta_p | が成り立つので、 \alpha_p \beta_p = p より

 |\alpha_p| = |\beta_p| = p^{\frac{1}{2}}

が言える。


 L(E, s) のオイラー因子  L_p(E, s) の絶対値は

 \displaystyle \begin{align} |L_p(E, s)| &= \frac{1}{|F_p(p^{-s})|} \\
&= \frac{1}{|1-\alpha_p p^{-s}| \cdot |1-\beta_p p^{-s}|}
\end{align}


ここで、複素数  A, B について

 |A| - |B| \leq |A + B|

すなわち

 \displaystyle \frac{1}{|A + B|} \leq \frac{1}{|A| - |B|}

が成り立つことから

 \displaystyle \begin{align} |L_p(E, s)| \leq \frac{1}{(1-|\alpha_p| |p^{-s}|) \cdot (1-|\beta_p| |p^{-s}|)}
\end{align}

が言える。

ここで先ほど得た  |\alpha_p| = |\beta_p| = p^{\frac{1}{2}}

 |p^{-s}| = p^{-\operatorname{Re}(s)}

であることから

 \displaystyle \begin{align} |L_p(E, s)| \leq \frac{1}{(1-p^{\frac{1}{2}-\operatorname{Re}(s)})^2}
\end{align}

が得られる。


リーマンゼータ関数  \zeta(s) のオイラー積

 \displaystyle \zeta(s) = \prod_p \frac{1}{1-p^s} = \prod_p \zeta_p(s) \;\; (\operatorname{Re}(s) > 1)

を考えると

 \displaystyle \begin{align} |L_p(E, s)| \leq \zeta_p(-\frac{1}{2} + \operatorname{Re}(s) )^2
\end{align}

が得られる。これにより  L(E, s) の収束性はリーマンゼータ関数  \zeta(s) のオイラー積の収束条件  \operatorname{Re}(s) > 1 に帰着される。


以上により

 \displaystyle \operatorname{Re}(s) > \frac{3}{2} \;\; \Longrightarrow \;\; |L(E, s)| < \infty

が得られる。


これが必要十分条件になっている、というような記述をどこかで見つけた気がするのだけど、本当なのだろうか? 本当だとしてどうやって証明したら良いだろうか?
(というのも、上では三角不等式による不等式評価をしてしまっているので、そのままではうまくいかない気がする・・・)