(前の記事に大きな勘違いがあったので修正しました。)
楕円曲線 に付随するL関数
が絶対収束する条件について考えたい。ここで
であり、楕円曲線 の での還元を と表す。
なお、本当は良い還元を持つかどうかでオイラー因子の形が変わるのだが、今回は一旦無視する(良い還元を持つものだけに限定する)。
そもそも無限積における絶対収束の定義からおさらいしたい(前回はこれを理解していなかった)。
まず、数列 に対して、任意の について であるとき、無限積 を次で定義する:
これが有限の値に収束するとき、無限積が収束するという。
特に
が絶対収束するとき、無限積
は収束する。このとき、無限積 は絶対収束するということにする(絶対収束の定義)。
また
が成り立つことから、少し議論すると
も成り立つ。これも、右辺の形の無限積における絶対収束の定義としたい。
における無限積の定義は素数 に対するオイラー因子 を小さい順に並べて、順次掛け合わせたものとして定義される。
絶対収束の条件を求める上で、楕円曲線のハッセの定理(次式)が使える。
なぜか。
唐突だが、オイラー因子 の分母において として
という2次多項式を考える。この が重根または相異なる虚数根を持つ条件を考えたい。これについては、判別式が負である条件を考えれば良い。
すなわち
である。
つまり、こういうことである。
ハッセの定理()は真なので、 が重根または相異なる虚数根を持つから
となるよう とおく(重根の場合は )。
は実係数多項式なので、 は複素共役の関係にある。特に が成り立つので、 より
が言える。
は
と表すことができる。
したがって、無限積の絶対収束の定義を用いると
が収束する条件を考えれば良い。
先ほど得た と
であることから
ならば であり、このとき
が収束する(リーマン・ゼータ関数)ことから、最後の級数(各項を2倍したもの)も収束する。
2つの数列 に対し、任意の について であり、ある が存在して であるとする。このとき、 が収束するならば も収束する。
を使っている。
https://www1.doshisha.ac.jp/~kmizoha/analysis1/Lecture10.pdf
以上により
が得られる。
これが必要十分条件になっている、というような記述をどこかで見つけた気がするのだけど、本当なのだろうか? 本当だとしてどうやって証明したら良いだろうか?
(というのも、上では変形の過程でいくつか不等式評価をしてしまっているので、そのままではうまくいかない気がする・・・)
参考
https://genkuroki.github.io/documents/Calculus/02%20series.pdf
http://www.gem.aoyama.ac.jp/~kyo/sotsuken/2015/sotsuron_2015_ezoe.pdf
ここで書いたのと違う方針だけど、ディリクレ級数の形に直して計算する方法があった。下の方が筋がいいのかも。
http://www.math.columbia.edu/~phlee/CourseNotes/L-functions.pdf
別の方法
もう少し直接的に評価する方法もあったのでまとめてみる。無限積
が絶対収束することの定義は
が絶対収束することだった。
あとは上と同じように において が収束することから、絶対収束性が従う。
参考:
https://www.math.u-bordeaux.fr/~ybilu/algant/documents/theses/Bruzzesi.pdf