tsujimotterの下書きノート

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特定の虚数乗法を持つような楕円曲線を作る方法

一つ前の記事と紛らわしいが、虚2次体  K の整数環  \mathcal{O}_K が与えられたとき、自己同型環が

 \text{End}(E) \simeq \mathcal{O}_K

となるような楕円曲線  E を作ることができる。参考は、楕円曲線論概説(上)のp.121を読むこと。

 \newcommand{\a}{\mathfrak{a}} \a を 0 でない  K の分数イデアルとする。埋め込み  \a \subset K \subset \mathbb{C} によって、 \a \mathbb{C} の格子とみなす。

そもそも \mathbb{C} の格子  \Lambda \subset \mathbb{C} の定義は、 \mathbb{C} の離散部分群で、 \mathbb{C} \mathbb{R}-基底を持つものであった。

虚2次体に対しては  \a が階数 2 の  \mathbb{Z} 加群であって

 \a = \mathbb{Z}\omega_1 + \mathbb{Z}\omega_2

とかける。また、 \a \not\subset \mathbb{R} であり、格子の条件を満たす。

よって、その自己準同型環が

 \begin{align} \text{End}(E_\a) &\simeq \{ \alpha \in \mathbb{C} \mid \alpha \a \subset \a \} \\
&= \{ \alpha \in K \mid \alpha \a \subset \a \} \\
&= \mathcal{O}_K \end{align}

1行目から2行目の変形は、 \a \subset K であることからわかる( K 以外の元をかけると  K を飛び出してしまう)。2行目から3行目の変形は、 \a は分数イデアルということからわかる(分数イデアルは、整イデアルに  K の元をかけたものである。よって、整数環の元をかけても元の集合の中に戻ってくる)。

よって、 \text{End}(E_\a) \simeq \mathcal{O}_K であるような楕円曲線  E_\a を得ることができた。


構成から分かるように、同じ虚数乗法を持つ楕円曲線は(同型のことを考えなければ)分数イデアルの数だけ作ることができる。