前回の記事とも繋がるのですが、元々は複素関数の正則性の定義について考えていたのでした。
すなわち、複素関数 において、
が存在するとき、 は で微分可能(正則)であるといい、この極限値を と表す。 での極限は、前回注意したように任意の方法で近づけた極限が一致することを意味する。
ここで、 が で正則であるとき、コーシー・リーマンの関係式を満たすことを示したいと思う。本当は、 を具体的に書き下したいというのが元々のモチベーションである。
さて、 は複素関数なので、変数 および は複素数である。したがって、 と実数 で表すことができ、 はこの変数 の2変数関数だと思うことができる。また、 の方も、実部を であり、虚部を と表すと
のように、2変数実関数の和として表すことができるわけだ。
この前提のもと、 を考えたいと思う。先ほど述べたように、 は で正則なので、任意の方法で極限が存在する。ここで と表すと、
- ① 軸方向に してから、 軸方向に して得られる極限
- ② 軸方向に してから、 軸方向に して得られる極限
は、少なくとも一致するはずである。
そこで、①と②を具体的に計算しよう。
①については
が成り立ちます。②については
も成り立ちます。
よって、
が成り立つと言うのが結論です。実は、私の元々の目的からすれば、これが出したかった式でした。つまり、 を だけの偏微分の積と、 だけの偏微分の積という2通りで表すことができたと言うわけですね。
コーシー・リーマンの関係式はここから一瞬で出ます。実部と虚部をそれぞれ比較すると
となりますね。
ここまでの議論は、
という話でしたが、実はこれは必要十分条件になっています。すなわち、コーシー・リーマン関係式が成り立つことを示せば、 の正則性が言えてしまうわけですね。複素関数論って面白いですね。