Twitter上でこんな問題があったので、メモがてらまとめてみます。
ax^2+bx+c=0の2解をα、βとするとき、(α+1)(β+1)の値を求めるのに展開し始めて、ちょいと待て!とw
— 河合祐介 (@tkawai18_tkawai) 2021年1月29日
2次多項式の根と係数
2次多項式 の2根(重根でも可)を としたときに、
を求めよ、という問題ですね。 を入れ替えても対称な、対称式になっています。したがって、対称式の基本定理より、係数の四則演算で表せると言うのが背景にあるわけですね。
実際、展開すると の基本対称式が得られるので、解と係数の関係により係数に置き換えていってもいいわけですが、もう少し賢い方法はないか?という話のようです。
ここでポイントになるのは、多項式が
のように展開できるということですね。これは解と係数の関係を導くために使う式ですが、これをこのまま使います。
両辺に を代入すると
となりますが、右辺は をくくり出すと
になります。したがって
となる、というのが今回の結論です。
右辺の分子が係数の交代和(プラスマイナスを交互にかけて足し合わせる)となっているのがポイントですね。
n次多項式への一般化
ふと思ったのですが、この話はそのまま 次多項式にも適用できそうですね。
実際、 とおいて、その(重複含む) 根を とおきます。複素数の範囲まで広げれば、代数学の基本定理より重複度込みで 個の根を持ちますので、この仮定は十分一般的です。
このとき
とおいて、 とすれば
となりますので
が導けました。
ここで が偶数であれば
となるし、 が奇数であれば
となります。いずれにしても係数の交代和になりますね。
円分体の分岐
似たような話で、円分体の整数環 で有理素数 が分岐すると言う話があります。
tsujimotter.hatenablog.com
多項式 を有理係数の範囲で分解すると
とできますが、この を 次円分多項式といい、その根の1つを と表します。
ところで、 の根は の 乗根なので、 を根に持ちます。したがって
と分解されますね。すなわち、両辺 で割ると円分多項式が
と分解されたことになります。
ここで先ほどと同じように、今度は を代入すると
となります。これは、 が において、 個の整数の積に分解されたことを意味しますね。
イデアルで表すと
ということになります。また、(ただし、 は と互いに素)が の単数であることから、 のイデアルとして
が成り立つことになります。したがって
なるイデアルの等式が成り立ちます。なお、 なので、 の公式によって、上の式は が において完全分岐することを意味します。特に は素イデアルとわかります。
だいぶ話は込み入ってきましたが、最初に述べたような問題は一見高校数学の計算問題のようですが、たとえばこんな風な応用もあるんですよ、という紹介でした。