複素数 の間に
なる関係があるとします。 がともに正則関数であるとき、 は双正則であるといいます。
正則なので微分ができるわけですが、このとき次が成り立ちます:
さて、これは「逆関数の微分は微分の逆数」であるということを表しています。
単に、式の形だけみて を分数だと思うと、逆数とったらこうなるよね、と思うかもしれません。
いやちょっと待ってくださいよ。そもそもの微分係数の定義はこうでした。
この定義の通りに考えると、 であり、 は の逆関数です。そう考えると、なんでこの式 が成り立つんだろうと不思議になってきます。
今回はその不思議に対して直接答えを与えることはできませんが、ひとまず式 の証明を与えることだけやってみたいと思います。コーシー・リーマンの関係式と連鎖律を使うことになります。
tsujimotter-sub.hatenablog.com
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証明
と のように、実数および実関数で表示します。(複素数は実2次元のベクトル空間であるという事実を大いに使います。)
ここで、 を の関数だと思って偏微分すると であることと、連鎖律から
を得ます。同様に を の関数だと思って偏微分すると より
が成り立ちます。
を行列表示すると
となります。(行列の部分はまさにヤコビアンですね。)
行列の部分はまさにヤコビアンですが
とおくと
となります。
ここで、コーシー・リーマンの関係式で得られた微分係数の式より
が成り立ちます。また、
となり、どちらも一致することが確認できます。よって
が示されました。
微分係数の非零性
ちなみに、式 の事実によって、 が言えてしまうことを注意しておきます。
は正則なので も正則です。一方、式 を と を入れ替えて使うと
です。もし であれば、 が極を持つことになりますが、これは正則性に反します。ゆえに、 が成り立ちます。