山本先生の「数論入門2(岩波講座現代数学への入門)」に、僕が知りたかった「楕円モジュラー関数」と「虚二次体」の話が、この上なくわかりやすく書いてあったので、ここにご報告します。
- 作者: 山本芳彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1999/09/20
- メディア: 単行本
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類数1の虚二次体におけるj函数の値は整数
「ラマヌジャン定数がほとんど整数である」に関する「虚二次体 の類数が1なら は整数()」の話について。
端折って説明すると:
- 判別式 が等しく,対等な二つの2次無理数 はj関数値 が等しい
- 任意の二次無理数 は,判別式が等しい対等な二次無理数 が基本領域上に存在する。
- 対等 という同値関係で,判別式 の2次の無理数の集合 を割ると となるが,このすべての類は基本領域上の数によって代表される。
- 判別式 の無理数の類のj関数値 を根に持つ類多項式 は整係数多項式となる。次数 は判別式 の類数と同じ
- もし類数1ならj関数値 は整数
- 2次無理数は一般に は「代数的整数 」かつ類数1なら より と考えても良い
- 基本領域上の先ほどの無理数の類の中には必ず1つ 型の無理数が存在するので、 は整数になるというわけですね。あーすっきりした。
- 疑問: 類多項式ってなんで整係数多項式になるのだろう。つまり虚二次体の整数環に対するj関数の値はなぜ代数的整数なのか。
のヒルベルト類体
前から疑問だった のヒルベルト類体 が、なぜ
の分解体になるのかもよくわかった。
のヒルベルト類体 は で生成される。 の類多項式 は以下のようになる:
あれ は?
一方で, の根 を に添加すると6次拡大 ができる。
の判別式
より,
が得られるから, は を含む拡大である。
少し考えると, は の不分岐アーベル拡大であることがわかる。 は 次拡大(すなわち,類数と一緒)より, は最大不分岐アーベル拡大(すなわち,ヒルベルト類体)である。ヒルベルト類体の一意性より がわかる。
類多項式と類体論
類多項式って円分多項式にどこか似ているなぁと思った。
- 円分多項式は「指数関数の特殊値の共役な組」を根に持つ整係数多項式で、類多項式は「楕円モジュラー関数の特殊値の共役な組」を根に持つ整係数多項式。
- 類体論的には、どちらも大事なアーベル拡大を生成する。
ラマヌジャン定数との関連
の形していて, はカスプ形式なので,展開の定数項が0,つまり,少なくとも1位以上の極を持つ.
は の 展開,
に を代入すると得られる。 は に対応しているので,この係数が になるように正規化すると,自然と 744 がでてくる。これが 744 の秘密。